刃物の町

広東省陽江市。珠海から車で飛ばして 2 時間、広州から 3 時間。風光明媚な海沿いの街ゆえ海鮮料理で有名だが、中国随一の「刃物の町」でもある。じつに中国の刃物輸出の 8 割が、陽江からと言うから驚きだ。そんな物騒な称号に負けじとばかりに、陽江の路上は族気質強めのバイクで溢れ、2020 年代にしてなお北斗の拳の風情をたっぷりと味わうことができる。ラッシュ時の赤信号では、「カッとぼうぜっ!!」とばかりに大規模なゼロヨンが自然発生するので要注意。

 

今回、ご縁があって、そんな陽江でも珍しい刀剣工房にお邪魔した。武器商人なんて、某ロールプレイング・ゲームで装備を整えるときにしかお世話にならないと思っていたが、人生分からないものである。これも広東駐在の役得と言うべきか。工房は、期待を上回る荒涼とした土地に有り、周囲には管理者の定かでない家畜やら、野犬やらが闊歩している。過保護に育てられた日本人の感覚的には、工房と言うより、収容施設と言った趣きだ。

 

このところ、日本ではちょっとした日本刀ブームで資産家の投資対象にもなっているようだが、こちらの刀剣の価値は不明。なんだか使い道の分からない物騒な武具まで登場したが、どうせ持ち帰れないし、持ち帰りたくもない。それに、柔よく剛を制す、専守防衛、汚物は消毒が私の信条だ。

秘境でもないが、都会でもない陽江。垢抜けて脱色された、最近のシャバい珠海が物足りないあなたなら、存分に楽しめるかもしれない。