タウナギの土鍋飯

武漢の鰻屋が閉店するようだ (詳細はこちら)。日本式の鰻をリーズナブルに楽しめるので、武漢出張の際には、かならず寄っておきたい店の一つだった。辺境の地、珠海にはこんな気の利いた店は無いので、日本人がめったに食べないタウナギ (黄鱔) でも食べてみようと思う。タウナギの調理法は中国各地でさまざまだが、ここ広東では台山名物、黄鱔煲仔飯 (タウナギの土鍋飯) が最もポピュラーだ。

せっかくなら本格的なものを食べたいので、老珠海の象徴「檸溪文化広場」に向かう。しつこいようだが、20 年前は、珠海で最高にクールでイケてるスポットだった。今回訪れたのは、文化広場から檸溪路を挟んで真向かいの「明鳳台山黄鱔飯」。店名もじつに簡潔で潔いし、七色に光るデーハーな看板もなかなかよろしい。

店内は最近改装されたとかで、まあまあ清潔感がある。黄晶果と称する謎の激甘フルーツの押し売りにあったのはご愛嬌だが、メニューは総じて良心的。場末と言ってしまっては失礼だが、こんな何気ない食堂でも、そこらの海鮮系大牌檔 (たい ぱい とん) の水準を軽く超える味を提供してくるのが、さすが広東。オススメ料理の黄鱔煲仔飯は、淡水魚特有の臭みが心配なところ、絶妙な量の香菜で爽やかに仕立ててあった。まさに夏バテに最適の煲仔飯だ。海鮮料理などは、「これを香港で食べたらいくら。。。」などとついつい庶民派の思考になってしまうが、香港のテンプル・ストリートで観光客に囲まれるよりも、こちらで地元のオッサンたちに囲まれる方が、よほどリラックスして食事を楽しめる。

【明凤台山黄鳝饭 (柠溪店)】
珠海市香洲区香洲区柠溪路 471, 473, 475 号
営業日時: 月〜日 09:30 – 22:00

閉店情報: Taco James


この日が来るのは分かっていた。珠海のタコス専門店、Taco James 環宇城店が 2023 年 8 月をもって閉店した。同店が営業していたショッピング・モールは、珠海の前山地域最新の人気モールなので、立地は問題ないはず。しかし、周囲の飲食テナントやファーストフード店の盛況に比べ、Taco James では閑古鳥と言っても過言ではない状況が続いていた。けだし、食材とコンセプトが、今の珠海には早すぎたのだろう。

 

珠海版「ぴあ」と自他共に認めている「珠海日本人生活情報」では、過去にこの名店について、一本の記事を掲載している。ご興味のある方は、こちらもご参照いただきたい。Zhuhai.jp の援護射撃をもってしても、Taco James の延命をはかることは難しかった。珠海に於けるタコス受容史はまだ始まったばかり。在りし日の姿をここに掲載し、同店の捲土重来を心から祈る。



台風一過

 

珠海が都市機能を取り戻しつつある。数十年に一度とも言われた超大型台風 9 号の直撃から一夜明け、珠海市内に少しずつ普段の生活が戻ってきた。バスはすでに運行を開始し、一部のスーパーや商店、飲食店なども営業を再開している。

 

広東省や香港を台風が襲うと、必ず見られる風物詩が、倒木。毎度毎度、日本人には信じられないほど気軽に、街路樹が倒れ込んでくるので気をつけていただきたい。今回も、市内のいたるところで倒木を確認することができた。鉄パイプなどで補強済みの木でも、軽く薙ぎ倒されているのが、台風 9 号の苛烈さを物語る。

 

一部の住宅地では、倒木による被害を防ぐため、事前に余分な枝の剪定が行われていたようだ。

 

前山河はかなり水位が上がり、まだ風も強いので、日本的な基準では十分に危険な状況なのだが、気の早い珠海の釣り人たちは、すでに出勤している。一体、何が彼らを駆り立てているのだろうか。。。

 

珠海市内で台風対策進む

[ 9 月 2 日 08:00 更新]

現地時間 9 月 2 日午前 8 時現在、珠海市内での降雨はほとんど見られず、強い風が残っている状況。


[ 9 月 2 日 01:00 更新]

現地時間 9 月 2 日午前 1 時現在、珠海市内の風雨はさらに強まり、路上を走る車の姿も完全に消えた。

[ 9 月 1 日 23:30 更新]

現地時間 23 時現在、珠海市内では風雨ともにかなりの強まりを見せている。前方に見えるのは、珠海の大動脈、九洲大道。

[ 9 月 1 日 17:30 更新]

超大型台風 9 号の接近に伴い、珠海市内では台風対策が進んでいる。本日、9 月 1 日 13 時に発令された就学操業停止措置に伴い、市内最新のショッピング・モール、珠海環宇城もテナントが早々に店仕舞いし、内部は閑散としていた。閉店直前、モール内のスーパーには食料品を買いだめする市民が集まり、とくに広東人の食生活に欠かせない葉物野菜はいち早く売り切れたようだ。

ショッピング・モールとモールに併設するオフィスビルのゲート、とくに前山河に面したガラス扉は厳重に補強され、台風を迎える態勢が整えられていた。

 

珠海市民の期待を一身に背負って同モール内にオープンしたばかりの LAWSON は、開業 3 日目にして (一時的に) 強制クローズと言う、若干不運なスタートを切ることとなった。

 

珠事美好 LAWSON 来了

 

珠海人が待ちに待った LAWSON がオープンした。8 月 30 日付けで、珠海市内に 5 店舗同時開店したと言う。そのうちの一つ、珠海環宇城店に Zhuhai.jp 特派員が駆けつけたとき、オープニング・セレモニーはすでに終わっていたが、かなり盛大に祝われたようだ。コンビニエンス・ストアのオープンをこれほど大仰に祝うのは、日本ではとても考えられないが、珠海人の期待がそれだけ大きかった証左とも言える。

 

開業記念ということで、「福袋」の特売に精力を注いでいるのが珍しく、日本酒や日本のウイスキーのセールをしているのも、なんだかコンビニらしくない。現状、店内の半分は、福袋に占拠されているので、品揃えなども確認しようがないが、これから充実していくものと期待する。珠海の地元資本の便利店では、ちょっとした弁当やまともなホットスナックなどが入手できないので、もし自宅近くに LAWSON がオープンされたのなら、きっと重宝することだろう。今しばらくは、娯楽の少ない珠海人の群れに耐える必要がありそうだが。。。

 

ちなみに、店内は一見、普通の LAWSON なのだが、青と白の市松模様の天井がめちゃんこ眩しい。これはかなり斬新なデザインなのではないだろうか?


珠海のピノキオ

 

もちろん珠海にも、有名なポルトガル料理店が存在する。もはや老字号と呼んでよいほどの歴史を持つ、九洲港近くの「ピノキオ (澳門木偶葡國餐廳)」だ。なんでもマカオに「ダンボ」と名乗るポルトガル料理の老舗があり、そこからゴニョゴニョと大人の事情で分家し、珠海に進出してかれこれ 20 年以上が経過したと言う。やむにやまれぬ経緯があったのだろうが、料理の方はしっかりと直系で引き継いでおり、いつしか珠海のポルトガル料理を代表する存在となった。

 

石花東路のピノキオがある一画には、他にも (珠海にしては) 悠久の歴史を誇る日本料理店やインド料理店が有り、夕食時など駐車スペースを確保するのも一苦労だ。店内は、風格のあるゆったりとした空間で、ポルトガル風の内装で落ち着いて食事を楽しめる。2 階には個室やパーティールームのようなシックな広間も有り、天気が良ければテラスに出ることもできる。かつては九洲港を望む絶好のロケーションだったのだが、残念ながら今は港の工事現場ビューだ。

 

ところで、こちらのメニューの表紙、宗家のダンボ同様、われわれ日本人にもとても親しみのあるキャラクターが使われてる。どうも著作権関係については、比較的無関心な一族が経営しているようだが、なにしろ喧嘩を売る相手が大御所なのでこちらの方がビビってしまう。

 

鰯の塩焼き、鱈のコロッケ、ムール貝、ポルトガル・チキンなど、一通り以上のポルトガル料理が揃っていて、ちょっと珍しい西洋風炒飯も美味しかった。なにかと一皿が大きいので、少人数の会食には向かないのが難点だが、珠海で中国料理や茶餐廳に疲れたときなどに重宝する。

 

【澳门木偶葡国餐厅 (珠海店)】
珠海市香洲区石花东路 30-32 号
営業日時: 月〜日 10:30 – 22:00

珠海の老字号で飲茶

情報化社会の弊害なのか、広東省内の飲茶の味が平均化されてきたような気がする。よく言えばハズレが減ったのだろうが、香港と広州の微妙な味付けの違いなど、昔ほど鮮明ではなくなってきた。たしかに香港の点心は巧緻にして洗練されたもので、これを踏襲しさえすれば、どの街でも相当以上の支持を集められるだろう。広東料理のホームタウン、広州に於いてさえ、猫も杓子も香港資本の利苑酒家 (Lei Garden) で飲茶を楽しむ時代になってしまった。しかし、人間なんて贅沢なもの。香港の都会の水で磨き上げられた点心ばかりを食べていると、味に面白みがないとか、嶺南の風情が足りないとか、意味不明なことをボヤき始める。

 

そんな懐古厨のあなたにおすすめなのが、珠海の老字号、利苑海鮮酒家だ。ド派手な玄関や、やたら元気な料理の立て看板を見るだけでも、珠海がもっとギラギラしていた時代にフワッとタイムスリップできる。店内は平日の昼間でも、地元やマカオからの常連客でほぼ満席。正直、どこかのリーガーデンとは比較にならないコスパの良さなので、混雑も至極当然だ。そしてまったくの主観ながら、やはり広東式の飲茶は「ハイラー!レイガァー!ンゴンゴ!」と広東語の喧騒に包まれながら食べた方が、八割がた美味しく感じる。

 

絶対に食べたい蝦餃 (はー がう) は海鮮酒家の強みを十二分に活かした、採算度外視のエビの質と量。原価厨のあなたもこれには大満足。世界中から押し寄せる観光客を納得させるために、香港の点心は軽やかさという道を選択したのだと思う。香港の月餅がいつのまにか、西洋菓子のムーンケーキに変容したのと同じように。しかし、ここではギリギリ踏み外す一歩手前の、荒々しくも繊細な点心が楽しめる。決して味が濃いわけではなく、どことなくその重心は低く、しかし田舎っぽくはならない。かつての広州の味に近い部分もあるが、当店ならではの仕掛けも多い。叉焼包を手にして、そのズシリとした重みに驚いたのは初めての経験だった。

 

他にも、サプライズ入りの特大菠蘿包や、名物料理の石磨腸粉など、通好みの外せない料理が多い。ノスタルジックなこだわりが強くなりすぎたタイプの日本人には、あつらえ向きの名店だ。

 

【利苑海鲜酒家】
珠海市香洲区桂花北路 42 号
営業日時: 月〜日 08:00 – 14:30, 17:00 – 21:30

広東人の LAWSON フィーバー拡大中

武漢から広東省へ出張中の日本人に朗報。ご周知のことと思うが、あの LAWSON が広東各地で続々と新店舗を展開している。武漢でコンビニと言えば、LAWSON (中百罗森) と Today (今天) だろう。近年はセブン-イレブンの躍進も目覚ましいが、すでにして LAWSON に飼い慣らされた武漢系日本人は、こと広東において深刻な LAWSON ロスに苛まされてきた。そんな中、武漢でお馴染みの「中百」LAWSON でこそないが、とにかく LAWSON が猛烈な勢いで店舗数を拡大しているのはありがたい。

 

写真はつい最近、広州市内の越秀公園前に開店したもの。佛山市内でも、すでに 2 店舗がオープンしたと聞く。

 

そして国境の街、珠海でも LAWSON プロジェクトが始動している。富華里や新都心をふくめ複数店舗の開業が予定されているようだ。今回、取材に訪れたのは、前山地区で最も集客力のあるショッピングモール、珠海環宇城の一階。環宇城の 6 号門と言っても分かりにくいが、ショッピングモールとルネッサンス・ホテル (珠海中海万麗酒店) を繋ぐ、前山河に面した大がかりな車寄せの脇で、内装工事を行っていた。

 

第二の故郷、武漢を遠く離れて、どうしても珠海に宿泊しなければならない場合。ルネッサンス珠海を選べば、徒歩圏内にいつもの青いコンビニが有るので、ちょっとだけ安心だ。

聖地巡礼: 少林サッカー

「男たちの挽歌 (英雄本色)」なら銅鑼湾のチョウ・ユンファ車清掃ビル、「インファナル・アフェア (無間道)」なら上環のアンソニー・ウォン墜落ビル、「ファイト・バック・トゥー・スクール 2 (逃學威龍 2)」なら寳馬山の漢基國際学校など、香港には、香港映画を生き甲斐とする日本人のテンションがおかしくなる、映画ロケ地が数多く存在する。それは、広大とは言えない香港であれだけの数の映画を生み出したのだから、ファンが巡礼すべき聖地が至るところにあって当たり前とも言えるが。。。翻って、80 年代以降の香港映画黄金期には、広州や深圳などの中国本土はあくまで映画の味付けとしてしか登場せず、本格的な本土ロケと言えば、香港で撮影しにくい時代劇や戦争シーンなどがメインだった。

 

1999 年、世界の映画界を震撼させた一本の映画が、珠海で撮影される。2001 年公開の「少林サッカー (少林足球)」だ。すでに「食神」や「喜劇之王」で、香港では飛ぶ鳥を落とす勢いだったチャウ・シンチーの実質的世界デビュー作。今作は、当時の香港映画興行収入記録をかるく塗り替え、じつに世界 32 か国で上映された。

 

この記念碑的映画の多くの部分が珠海で撮影されたことは意外に知られていない。今回、訪れたのはヒロイン (ヴィッキー・チャオ) の勤務する饅頭屋の店先。ここでヒロインが披露する太極拳がのちのストーリー展開にも大きな役割を果たす。また、有名なダンスのシーンの背景に映り込む、香山公園の南門もこの店の向かいにある。率直に言ってしまえば珠海市内のどこにでもありそうな路地だが、ロケハンでここを見つけ出したスタッフの慧眼により、映画史に残る名場面が生まれた。珠海在住の香港映画ファン、シンチー・ファンには、一度は訪れていただきたい珠海の名所だ。

 

他にも、決勝戦の宿舎は珠海度假村酒店、決勝戦は珠海市体育中心のスタジアム、どちらも珠海市内で撮影されている。

橋の解体工事

 

珠海の大動脈、九洲大道と珠海大道を繋ぐ前山大橋の側道の橋が解体されている。これだけでは一体どこの話だ?と珠海在住の日本人の皆さまからご叱責を賜りそうだが、都心部から珠海空港へ行くときに、必ず通る幹線道路が珠海大道だと言えば分かりやすいかもしれない。前山大橋は、都心側の九洲大道に入る交差点ではげしく渋滞するので、側道的な役割を果たす「簡易橋」を経由すると渋滞を回避でき、何かと使い勝手がよかった。簡単な橋脚の上に鉄板を載せた程度のシンプルな作りだが、水面との距離も近く、ちょっとだけ生活に潤いを与えてくれる存在だった。

 

とくに前山河には、随所にこのような橋がかかっていて、市民生活の一部となっている。橋の上で、日がな一日、魚釣りと言うか、かなり本格的な漁をしているおっさんは、まぎれもなく珠海の風物詩だ。とは言うものの、前山河で採れた魚はあまり食用には適さないとも聞いた。それでも時間のあり余ってそうなおっさんたちの、社交場としての役割は果たしているのだろう。言葉は聞き取れないが、釣れた魚を前に侃侃諤諤の大騒ぎをしているのを見ていると、こちらまでなんとなく楽しくなる。

 

鉄板剥き出しのツルツルの歩道の上を、出前のバイクが猛スピードで駆け抜けたりするので、この橋の上では事故が絶えなかったと聞く。解体の理由は、市民団体からのクレームなのか、単にその役目を全うしただけなのか、寡聞にして存じ上げないが、コンクリートジャングルの陽気な漁師たちに会えなくなるかと思うと、ちょっと残念だ。このようにして、珠海も少しずつ「都市化」されていくのだろうか。。。